坂道は上るもの

乃木坂46についてメインに書いていますが、時折、勉強や旅行や法律問題についても書いています。乃木坂46のファンの行動についても統計分析を行っています。

成人年齢引き下げと学校での法律教育

 

 
f:id:rakudapetra:20200224165034p:plain

 

はじめに

  • 今回は成人年齢引き下げについて書きます。2022年から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。選挙権はすでに18歳から付与されています。成人年齢を引き下げた理由は他国と歩調を合わせる意味と18歳であれば、しっかりとした判断能力があるためです。18歳で成人するとどのようなことが起こるでしょうか。未成年と成人の違いは何かについて法律的に説明していきます。今回は、成人年齢引き下げについて賛成反対意見を述べるのではなく、成人になるとどのようなことが起こりうるのかといったことを説明したいと思います。未成年の方だけでなく教育関係者に読んでいただきたいです。これから学校で法律について教える機会が増えると思います。そのことに備えて読んでいただきたいですし、法律を知っていれば救われる人がいますし、トラブルに巻き込まれずに済むこともあります。大切な人を守ることだってできるかもしれません。

 

 

成人年齢って何で決まっているの?

  • 成人年齢については民法第4条で「年齢二十歳をもって、成年とする」と規定されています。現時点では二十歳ですが、2年後の2022年には成人年齢は18歳となります。ただし、未成年であっても、結婚をしていれば成人したとみなされます。民法では成年と言いますが、成人のほうが一般的なので、成人とします。成人年齢満たない人を未成年者と言います。なぜ未成人ではなく、未成年で、逆に成人のことを成年とあまり言わないですよね。民法上、成人年齢が引き下げられるだけであって、飲酒喫煙はそのまま20歳のままです。つまり、民法上での大人は18歳で、未成年者飲酒禁止法未成年者喫煙禁止法での大人は20歳です。次の章で未成年者について書いていきます。

 

 

未成年者の法律的地位

  • 未成年者は成人年齢に満たない者です。未成年者には様々な制約があります。たとえば、旅行の申し込みなどをするときに親権者の同意欄があります。未成年者と親権者の同意があって初めて契約が成立します。親権者の同意欄が空白だと、申し込みはできません。未成年者個人で一部例外を除き、法律行為を行うことはできません。これは同じ民法第5条で規定されています。申し込み(債権)も民法上の立派な法律行為です。また、親権者の同意なしに買ったものは、親権者が返品することも認められています。未成年者が成人であるかのように売主を騙した場合の返品は認められません。
  • 未成年者のように誰かの同意がなければ、権利行使できない人を「制限行為能力者」と言います。親権者(親御さん)を「法定代理人」と言います。法定代理人は親権者だけでなく、特別な事情がある場合は他の人でなることができますが、虐待や身寄りがないといったケースに限られます。未成年者は法律行為を単独で行うことができないため、「いちいち親に相談するの面倒やわ」と思われる方もいるはずです。僕もそうでした。実は、未成年者は法律で守られた身分であって、すべての責任を自分一人で抱えることなく、親権者とともにその責任を負います。つまり、常に親という後ろ盾が付いているのです。そのため、契約についても少し楽観的にとらえることができます。しかし、成人はその後ろ盾がありません。次の章で成人(行為能力者)について説明します。

 

 

誘惑がいっぱい

  • 成人になると法律行為を自由に行うことができます。契約も親権者の同意は不要です。その分、問題が発生した場合の責任はすべて契約者本人の責任になります。契約するときは慎重にとよく言われるのはそのためです。大学などに入るとわけのわかないセミナーや団体に勧誘されることがあります。その団体やセミナーに加入したり、参加したりして、金銭トラブルに巻き込まれる人が後を絶ちません。成人年齢引き下げでこのような問題は今よりも多くなるはずです。
  • 怪しいセミナーや団体に勧誘する人は寂しさや不安に漬け込みます。僕が会ったことのあるマルチ商法にはまっている人は寂しさに漬け込んで、充実した生活を起こることをしきりに主張していました。その構図は怪しい勧誘に共通しています。大学になれていない一年生や就活に困っている四年生は勧誘されやすいです。未成年の一年生は勧誘されても、親の同意がなければ、本来契約として成り立ちません。しかし、その手の団体はそういうことを無視したり、「親に依存しているからダメなんだ」と言ったりしてきます。これで契約した場合は民法第96条に規定されている強迫による意思表示はと取消が認められています。ちなみに民法では「強迫」で、刑法では「脅迫」です。さらに未成年者は親の同意になしに契約しても、そもそも法的に無効です。これらのことを知らずに、わけのわからない団体やセミナーに参加してしまうのです。大学の入学時のガイダンスで「怪しい勧誘に気を付けましょう」とよく説明されます。それと就活生へのわけのわからないセミナーなどへの勧誘が大学二大勧誘です。ただし、新歓の勧誘は健全なものが多いです。成人年齢が18歳になると、法定代理人の同意が不要になると、契約過程に問題がない限り、一度契約すると違約金などを請求され、取消が難しくなります。署名や押印をすれば、規約や約款を承諾したことになります。「こいつら怪しいな」と思えば、録音し、記録に残しましょう。契約過程に問題があれば取消すことができます。

 

 

法律について教育できる体制が整っていない?

  • 僕が高校の時に教わった法律と言えば、憲法民法家族法です。その他の法律は教わっていません。10年近く前なので、今はどうなのかわかりませんが、今も変わっていないと思います。教育者側に法律の知識がないことがあります。教員は憲法、学校教育法、教育基本法民法の一部、労働基準法については詳しいです。社会の教員で、これらの法律にプラスアルファぐらいです。法学部出身の教員でない限り、法律に詳しい人はいないと思います。つまり、法律的な知識を持たない教員が、法律問題を生徒に教えることができるのかという問題点があります。成人年齢引き下げと学校での法律に関する教育はセットだと考えています。生徒が成人になることのリスクを理解できず、卒業してトラブルに巻き込まれることもあり得ます。大学では前章のようなトラブルが起こっています。今後、高校生もその手のトラブルに巻き込まれるケースが増えるはずです。教師として、教え子がトラブルに巻き込まれることを望んでいる人はいないはずです。
  • そのためにも教員が最低限、契約については民法の総則や債権、労働に関しては労働基準法、犯罪行為については刑法のそれぞれの概要についての知識を持ち、高校まででそれらのことを教育すべきだと思います。実際のケースを使って、問題点などを生徒と先生が一緒に考える教育をしてほしいと思っています。それがままならないなら、弁護士を呼んで授業をすべきだと考えます。契約や権利についてよくわかないまま社会に出ると、必ずトラブルに巻き込まれます。だからといって、法律の勉強を個人に委ねるのは無謀なことだと考えます。どこかでしっかりと教えられないと理解できないぐらい難しい内容なので、学校である程度は教えるべきと思います。

 

 

最後に

  • 「法律がすべてではない」という言葉をよく耳にすると思います。その通りです。「今まで、こいつの言っていたこと間違いかよ」と思われたかもしれません。半分正解で、半分間違っています。確かに法律だけがすべてではありません。しかし、法律は守らなければならないルールです。違反すれば、罰が与えられます。逆に被害に遭えば法律を盾にすることができます。トラブルに巻き込まれて、泣き寝入りする人は法律を知らないからです。相手の言うことに従うしかありません。相手が違法行為をしていれば、それを理由に刑事罰を求めたり、損害賠償を求めたりすることができます。知っていると知っていないとでは、これからの人生が大きく変わります。学校を卒業して、勤めた会社がブラック企業で上司に辞めると言えば、「お前に掛けた経費、全部請求するからな」や「お前が辞めることによって発生した損害を請求するからな」と言われて、会社に残る人もいます。まず、辞めることで従業員に経費を請求することはできません。さらに会社が従業員に損害を賠償するケースは民法第709条に規定されている不法行為に対する損害賠償請求です。不法行為とは、犯罪行為と思ってください。会社を辞めることは不法行為ではなく、正当な権利ですので、問題ありません。つまり、会社に何を言われようが辞めることはできます。むしろ、上司が脅迫や強要の罪に問われる可能性があります。法律の知識があれば、いたくない場所から抜け出すこともできます。法律がすべてとは言いませんが、法律を知っているだけで救われることがあります。自分の身を守るのは自分ですが、その基礎を学校で教えるべきだと考えます。成人年齢が引き下がることが決まっているのであれば、なおさらではないでしょうか。