坂道は上るもの

乃木坂46についてメインに書いていますが、時折、勉強や旅行や法律問題についても書いています。乃木坂46のファンの行動についても統計分析を行っています。

実はかなり大変?!行政のお仕事

 

市役所のイラスト

 

はじめに

  • 特別給付金などで何かと話題になっている行政です。行政の役割は以前、三権分立のところで書いたように法に基づき行動することです。国で言えば、内閣、地方自治体では役所が行政機関に当たります。さらに広げると警察や消防や自衛隊も行政機関になります。今回は中央省庁や地方公共団体にスポットを当てて書いていこうと思います。行政機関で働く人たちを公務員と呼びます。裁判所や国会で働いている人も国家から雇われていますが行政職員ではなく、それぞれの組織で雇用されています。ちなみに国会議事堂の警備は行政機関の警察ではなく、国会が雇っている独自の警備部隊になります。

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公務員イメージ


 

おさらい

  • 行政のお話をする前に三権分立についておさらいしたいと思います。三権分立は法を守れているかチェックする司法、法を作る立法、法に基づいて行動する行政の3つの権力が分かれていることです。権力が集中すると独裁政治につながってしまうので、権力を分散させて、各機関がお互いを監視し合う体制にしています。そのため、三権の長は別々の人がなります。司法は最高裁判所長官、立法は衆議院議長参議院議長、行政は内閣総理大臣になります。自民党が与党で安倍総理が国会の長と思われているかもしれませんが、国会の長ではありません。安倍総理も国会の中では一国会議員なので各院の議長の言うことに従わなければなりません。各院の議長は選挙ごとに変わります。一時話題になった検察は行政機関になり、法務省の管轄になります。裁判所の一機関ではありません。

 

行政のお仕事

  • 行政は法に基づき行動する機関です。つまり、法の範囲内で国民・市民の生活を保障する機関のことです。日本全体に関わる仕事を行うのが内閣や中央省庁です。各自治体に関わる仕事を行うのが都道府県庁や市役所や町村役場です。それぞれの仕事のすみわけがなされているように思われていますが、今、話題の特別給付金の業務は国の仕事なのに、差出人が各市町村で、「なぜ国から来ないのか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。国の業務を各自治体に委託することは法律で認められています。このことを法定受託事務と言います。パスポートの発行は外務省の仕事ですが、各都道府県で行うことができるのも法定受託事務の一環だからです。国の仕事は国しかできないようになると、地方に住んでいる人からすれば手続きのためだけに東京へ足を運ばなければなりませんし、国の仕事量もパンクしてしまいます。そういった観点から国の仕事を地方に委託しているのです。国家の安全保障にかかわる仕事などを地方に委託することはできません。
  • 行政の仕事にも、行政の裁量に任されていることもあれば、行政が勝手な判断をできないことがあります。行政の裁量で行えることは、法律や条例の範囲内の仕事です。申請手続きで不備があって返されるのは法律や条例、その他規則で決まっているからです。法律や条例にないことを行うことはできません。役所仕事が杓子定規と言われるのはこのような決まりがあるためです。当初想定していた予算内で仕事ができなくなってしまった場合は、行政の判断だけで予算を勝手に増やしてはいけません。行政の長(首長)が予算案を議会に提出し、必ず議会の承認を得ないといけません。予算も法律と同じなので、立法機関の承認によって、初めて予算に基づく仕事をすることができます。予算は我々の税金で成り立っているものなので、行政が好き勝手に使っては困りますよね。なので、このような手続きを踏まなければなりません。
  • 地方自治体は国から独立しているわけでなく、国の一組織になります。そのため、国の仕事を地方に委託することがあります。しかし、各自治体が国の方針に必ずしも従わないこともあります。それは自治体の意向と国の方針が異なる場合に、国の方針の見直しを求めることが自治体の長からなされることがあります。それでも国と地方の対立が収まらない場合は国地方係争処理委員会が設置され審議されます。泉佐野市のふるさと納税問題のときにこのことが起こりました。それでも解決されない場合は裁判所の判断を仰ぐことになります。行政の問題は行政で解決しろと思われますが、行政機関が外部からの監視がなければ、下部組織に対して違法な行為を行うことを容認することになってしまいます。それでは問題があるので、法に抵触していないかを司法に判断してもらうのです。国家や地方運営については非常に規制が厳しく行政が逸脱するようなことをすると示しのつかない事態になってしまうので、どの組織も慎重に行動をします。

 

イメージが違うぞ!!公務員!!

  • 公務員と聞くと高給取りで安泰というイメージがあると思います。景気に左右されないという意味では安泰ですが、高給取りではありません。公務員の平均年収を見れば高い数字が出ていることがありますが、中央省庁の局長や地方公共団体の幹部がその数字を上げているだけであって実際の値はそこまで高くありません。公務員の年収の中央値を出すと世間で言われている値より低くなると思います。人事院規則には民間準拠規定があるため、民間企業の給与水準に合わせています。人事院とは公務員の就業規則などを定める機関で、公務員の人事部です。そのため、一般の公務員は民間とくらべてべらぼうに高いというわけでもありません。ただ、幹部になると話は別ですが、幹部はその自治体や省庁で数人しかいないポストなので、年収が高くてもおかしな話ではありません。公務員の知人から聞きましたが、公務員の給与に関しては非常に低く、ワーキングプア並みの手取りです。それ加えて、副業が禁止されているので、いつ生活苦に陥ってもおかしくない状況です。実はこれが公務員の現状です。公務員に対するバッシングがいかに的外れな議論であるかがわかると思います。
  • 税金の無駄遣いの象徴のように言われている公務員ですが、国際比較をすると人口当たりの公務員人口は非常に少ないです。小福祉国家アメリカよりも少ないのが現状です。資料も添付しますが、詳細を知りたい方やそんなこと嘘に決まっていると思われる方は前田健太郎先生の『市民を雇わない国家』をご覧ください。「公務員を減らせ」と言っているコメンテーターはこのことを知らないか、国民がそんなこと知っているはずもないと思っていることでしょう。

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上記2資料出典:社会実績データ図録 http://honkawa2.sakura.ne.jp/5190.html 2020年6月20日閲覧

 

  • 公務員が少ないと問題が起こっているかもしれないと思われた方もいるかもしれません。現在行われている特別給付金など新型コロナウイルスに関する手続きがスムーズに行っていないのも公務員数の少なさによるものと言ってもいいでしょう。元から公務員の数が世界と比較して少ないうえに、公務員改革の結果、公務員の数をさらに減らしてしまい、仕事量が減らず一人当たりの仕事量が増える結果になってしまいました。そのため、通常業務でも手いっぱいな上に今回のような事態になれば、キャパオーバーになってしまいます。給付金の支給が遅いのは公務員の怠慢ではなく、公務員の数が極端に少ないことよる弊害と言ってもいいでしょう。働き方改革を打ち出している行政ですが、まずは公務員の仕事量を減らすような工夫をして、行政が働き方改革に取り組まないと、民間企業に対して示しがつきません。ブラック企業が摘発されない一つの理由として労働基準監督署(以後、「労基」)の人員不足により摘発を行うだけの人員を確保できていないことが理由として挙げられています。行政は動かないのではなくて、動けるだけの人員がいないと言った方が正確でしょう。公務員が諸悪の根源のように吹聴したメディアや政治家にも責任があると言えます。結果として、自らの首を絞めていることになります。

 

最後に

  • 行政の仕事は、実は知っているようで知っていないことが多かったと思います。少し行政や公務員に対するイメージが変わったかもしれません。これらのことは知っているか知っていないかで大きく変わります。公務員が多いのに、仕事が遅いと思っていたかもしれませんが、人手が足りなくて、仕事が回らない状態なのです。おそらく、特別給付金の手続きについて、「モー〇ングショー」や「バ〇キング」では公務員の怠慢で遅れているといった事実無根のことを平気で言う人がいると思います。そのことが嘘であるのに真実であるかのように発信するのは、公務員に対する公共電波を使った侮辱や名誉棄損ではないでしょうか。公務員の残業や休日出勤は常態化していて、お世辞にもいい労働環境とは言えません。メディアでのバッシングのせいで、住民からも罵詈雑言を浴びせられながらも、日々仕事をしています。これを機に一度行政の仕事に関心を向けてみてください。自分の住んでいる自治体ではどのような取り組みがなされているか考えてみたり、これは国の仕事を地方がしているのかなどと思ったりしてみてください。行政の働き方も我々の行動で変えることができるかもしれません。